AIで再生医療用の培養細胞を品質管理するシステム「AiCELLEX」を開発

人工知能の技術を活用した画像診断技術によって、再生医療用の細胞を培養する際に品質管理を自動化できるクラウド型のシステム「AiCELLEX(アイセレックス)」の製品化が進められています。




このシステムを利用すると人手によらずに培養細胞の品質管理が可能なことから、高品質な細胞の安定生産が実現され、安全性やコストの面での向上が期待できます。

AIで培養細胞の管理を自動化

近年は再生医療による次世代の治療法の開発が精力的に進められていますが、そのためには高品質な細胞を人為的に増殖させる培養技術の進歩が不可欠です。

そのため、品質が安定した細胞を低コストで大量に供給するための培養技術の確立が非常に重要なものとなってきます。

しかしながら、細胞の培養は非常に高度な技術で、培養中の細胞の品質を正確に評価する必要があります。従来はこのような細胞の品質管理は熟練した作業者の経験や感覚に頼らざるを得ないため、安定性は経済性といった面では課題がありました。

細胞培養と細胞品質管理の過去と未来(株式会社イノテック・名古屋大学)

そこで、画像処理ソフトなどの開発を行う株式会社イノテック名古屋大学大学院創薬科研究科の研究グループと共同で、人工知能を活用した細胞の品質管理技術を開発しました。

これまでは細胞を作業者が顕微鏡で観察して、その形状から細胞の状態を判断していましたが、このシステムでは細胞の画像からAIが判断して細胞の状態をリアルタイムで判断することが可能になります。

そのため、細胞の品質管理の高精度化あるいは安定化が実現され、コストと労働力の面で大幅な削減につながると期待されます。

細胞画像の百科事典

「AiCELLEX」という名称は、AI(人工知能)とCELL(細胞)、そしてLEX(ラテン語で「辞書」の言葉の一部)から命名されました。

このシステムは、細胞画像の百科事典として機能する「細胞品質管理を支援するためのシステムです。細胞の画像をクラウド上のシステムにアップすると、その細胞の品質を「検索」するエンジンのように機能します。

AiCELLEXの概念図(株式会社イノテック)

ユーザーがウェブを通じて細胞の画像をシステムにアップすると、細胞品質に関係する「細胞の形状」が独自の指紋情報として数値化されます。

この数値化された指紋情報に基づいて、AIが品質診断結果をユーザーにレポートします。このAIは、過去の細胞画像と細胞品質を蓄積したデータベースを使って学習されています。

AiCELLEXの画像情報解析における特徴(株式会社イノテック)

レポートされる品質診断結果は熟練者の予測精度を超えており、また複数の画像を使って検索するほど、データベースが整理・精錬されていき、学習によってより高精度な診断結果が得られるようになるとしています。

AiCELLEXを使うことで、再生医療や創薬研究で用いる細胞を培養する施設ではリアルタイムな品質管理が向上、高品質な細胞の安定供給が実現されます。

製造される細胞品質が安定化すると、再生医療では安全性や治療効果の向上につながり、また創薬研究の現場では再現性や研究の成功確率が向上すると期待されます。

また、AiCELLEXのような自動化された管理技術が広まることで、細胞培養の失敗リスクを抑えることが可能で、製造コストを抑えられることから治療費の抑制にもつながります。

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