沖縄県で「バス自動運転システム」の実証実験、実際の公道で検証

自動運転の技術を研究開発している先進モビリティ株式会社、そしてソフトバンクグループのSBドライブ株式会社が「沖縄自動走行バスコンソーシアム」を設立して、沖縄県で実施されるバス自動運転の実証実験を受託したと発表しています。




同県で行われる自動運転とは、いったいどのような技術で実施されるのでしょうか。

沖縄におけるバス自動運転実証実験

沖縄県で行われるバスの自動運転実証実験は、内閣府が2014年度から推進している戦略イノベーション創造プログラム「自動走行システム」で実施されます。産学官の共同で自動走行システムの実現を目指し、事故や渋滞を減らし移動の利便性を飛躍的に向上することを目的としています。

このプログラムでは、自動運転技術を公共バスに適用した「次世代都市交通システム(ART:Advanced Rapid Transit)」の構築を目指しています。

一方で、沖縄県では那覇市の通勤時間帯で旅行速度が全国ワーストとなっているなど深刻な道路の渋滞を解消するため、「沖縄次世都市交通システム(Okinawa-ART)」の検討が進められいます。

実験車両の外観(SBドライブ)

今回の実証実験では、先進モビリティが新たに開発した実験車両が使用されます。この車両は市販の小型バス「日野ポンチョ」をベースに改造して開発されました。定員22人の低床ノンステップバスです。

走行ルートは沖縄県宜野湾市と北中城村が予定されており、全長は往復で約20キロメートル。1日の交通量としては約5万8千台にのぼる、都市部の比較的交通量が多い幹線道路が走行ルートとして選ばれました。

自動運転バスに試乗するのは、道路交通関係者などが予定されています。

実証実験の実施エリア(戦略的イノベーション創造プログラム

これまでに、すでに南城市と石垣市で基礎的な実証実験を終えており、自動運転の性能評価やシステムの動作検証、そしてモニター乗車、ヒアリングなどから自動運転バスの社会的な受容性が確認されました。(沖縄におけるバス自動運転実証実験の概要について

今回の実証実験では、第2ステップとしての技術の実証試験が行われ、実際の交通環境での自動運転バスの走行の可能性や、技術的課題が検討されます。特に、準天頂衛星や高精度3次元地図、そして人工知能の活用など高度な制御システムの技術的検証が予定されています。

準天頂衛星、高精度3次元地図による自動運転制御

今回使われる改造車に搭載される主な機器には、自動操舵装置、自動ブレーキ制御装置、順天頂衛星受信機、ライダー(7個)、走行制御ECUがありますが、鍵となる技術は「準天頂衛星と高精度3次元地図」を利用した走行制御と「磁気マーカー」を利用した正着制御です。

準天頂衛星や高精度3次元地図を活用した自動運転制御の安定性・信頼性向上の実証(SIP)

準天頂衛星「みちびき」からの信号を受信してバスの位置情報を把握、ライダーやAI技術を使って高精度3次元地図に基づき、高度な運転制御を実現します。

みちびきの信号を活用した位置情報は、日本全国に国土地理院が設置した電子基準点を活用して地域ごとに補正されるため、その誤差はセンチメートルレベルにまで抑えられる特徴があります。

磁気マーカによる正着制御の実証(SIP)

公共バスに自動運転車を導入するためには、車両がバス停に安全に立ち寄った後に元の走行ルートに戻る技術が必要になります。

バスが走行車線からバス停、そして元の走行車線に戻るには、バス停に入るための「アプローチ区間」、バス停に立ち寄る「正着区間」、そして元の車線に戻る「復帰区間」を正確に走る必要があります。

これらのルートには、ゴムの中にフェライト磁粉を分散させて微弱な磁界を発生する「磁気マーカー」が設置され、これを利用して正確な正着制御が行われます。

今回の実証実験では、公道上でこれらの技術の性能が評価され、通常の交通環境でも安全に走行が可能かどうかが検証されます。

その他、制御技術やセンシング技術の高度化に向けたAI技術の活用可能性や、加減速制御の活用による車内での転倒事故の減少、乗り心地改善などの検証も行われる予定です。

今後は、第3ステップとして沖縄ARTが目指す「速達性」や「利便性」などを実現するための総合的な検証、そして実装に向けたコストの軽減化技術などが検討される予定となっています。

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