人工知能を活用した技術はさまざまな作業を効率化することができますが、みずほ銀行では「デリバティブ取引」における契約業務の一部にAIを活用して業務の効率化を図る実証実験を行っています。
デリバティブ取引に関係する契約業務では多くの場合、紙媒体の契約書を顧客との間でやり取りします。
この契約書は「ISDA契約書」と呼ばれており、国際スワップデリバティブ協会が作成した様式に則っています。契約では、このISDA契約書を主にFAXやPDFなどの形で顧客とやり取りします。
取引においては、締結される契約書に関する情報をシステムに保存する必要があります。これまでは、個々の契約書に含まれる膨大な情報について、担当者が判断して手作業でシステムに入力する業務を行っていました。この作業には過去の情報を参照したり専門的な知識は判断力が要します。
一方、野村総合研究所では業務の効率化に寄与するための人工知能の活用法について、検証を行っています。その中で、契約文書や取引帳票などの文書を管理する業務の効率化といった領域でのAIの適用技術を評価しています。
そこで、野村総合研究所のAI技術を使ってデリバティブ取引における契約文書の管理業務の効率化を行う実証実験を、みずほ銀行が2017年2月から3月にかけて行いました。
利用されたシステムでは、OCRによって電子化されたISDA契約書を解析して、契約書に含まれるさまざまなデータを定型化して抽出し、保存しました。
このシステムではロンドンに本社をもつソフトウェア企業「RAVN System社」が開発した認識エンジンプラットフォーム「iManage RAVN AI platform」を使っています。
実証実験の結果、ISDA契約書に関する入力業務の効率化に成功し、また情報の検索が可能な形で保存されていることから、過去の契約内容の照会も効率的に行うことができることがわかりました。
実証実験の結果に基づいて、今後は本格的な運用に向けた検証を進めるとしています。
- iMage RAVN AI Platform:英国のソフトウェア企業「RAVN System」が開発したプラットフォームで、自然言語解析や機械学習の機能をもつ人工知能を搭載。法律事務所や金融機関などで文書の自動読み取りや要約を行う認識エンジンプラットフォーム。