機械学習技術と分子シミュレーション技術を組み合わせて、洗浄剤のメイクを落とす性能を予測するシステム構築の可能性を見出したと、ファンケルなどが発表しました。
ファンケルはこれまで、市販のウォータープルーフアイライナーと人工皮革を使ってメイク汚れの除去率を計算し、洗浄率を算出した500超の実験データを蓄積しています。
そこで、このデータをキリンの機械学習技術に活用してメイク落としの性能を予測するシステムを検討しました。
また、洗浄剤の成分組成や洗浄率のデータに加えて、使用した成分の鎖長や分子の大きさなど、分子構造に関する情報を数値化して用い、高い精度で洗浄率を予測しました。
AIで予測された洗浄率と実測値を比較したところ、高い精度で予測できることがわかりました。
構築されたシステムを用いて計算したところ、界面活性剤のなかでファンケルの独自原料であるヘキサカプリル酸ポリグリセル-20が最も性能が高く、また保湿剤であるPPG-9ジグリセリルやシクロヘキシルグリセリンなどの成分と組み合わせると高い洗浄率に寄与する傾向があることも判明しました。
そこで、最も洗浄率が高いと予測されるモデル洗浄剤を試作してメイク落としの性能を評価したところ、予測洗浄率と実際の洗浄率がおおむね一致し、メイクだけでなく泥などさまあざまな汚れに対しても高い洗浄性能をもつことも確認されました。
洗浄剤のメイクを落とす性能は、界面活性剤の分子構造だけでなく、その集合構造や、汚れに対する吸着状態にも強く左右されると考えられます。
そこで、これらの影響を検討するためにDPD法と呼ばれる分子シミュレーション技術を用いました。
100種類以上の組み合わせでシミュレーションを行った結果、汚れに対する吸着の仕方が洗浄率と相関があることがわかりました。
さらに、洗浄率が高い洗浄剤と低い洗浄剤とでは、水中で形成される構造に特徴的な違いがあることも明らかになりました。
今後はこれらの情報を機械学習に加えて予測の精度を向上し、高いメイク落とし機能をもつ洗浄剤の製品化に向けて検討を進めるとしています。
ファンケル・キリン・慶應義塾大学の共同研究でAI技術を用いた新たな洗浄剤開発プロセスを検討 ―高いメイク落とし機能を有する洗浄剤の製品開発へ応用―