人工知能で旨味を評価する「旨味大賞」が開催、いよいよ味までもが「見える化」

かつて「料理の鉄人」という料理対決をテーマにした人気のバラエティ番組があった。料理対決とは文字通り、ある決まったお題にしたがって料理をしてその優劣を競う、料理で対決する競技である。




料理対決の起源は古代中国の三国時代にまでさかのぼるそうだが、昔から人気のあるイベントということだろう。美味しんぼやミスター味っ子、最近では食戟のソーマなど料理対決をテーマにした人気漫画も多くある。

料理対決では、料理の専門家や「食通」と呼ばれる人たちが審査を行うことが多いが、どれだけ食に通じたプロであってもやはり「食」というものには個人の好みの部分が大きく影響してしまう。

どうにかして科学の力でより客観的な味の評価ができないだろうか。つまり、味の「見える化」ができないだろうか。

その一つの答えとなるかも知れないイベントが開催されようとしている。最新の味覚センサーと人工知能(AI)を組み合わせた味覚分析を活用した「旨味大賞」だ。

第一回旨味大賞

旨味大賞を開催するのはAIによる味覚分析サービスを行うAISSY株式会社。AISSYは慶應義塾大発のベンチャーで、旨味大賞では同社の味覚分析システム味覚センサーレオを使って「人が本当に美味しいと感じるものだけ」を選出する。

いったいどのようにして「旨さ」を判断するのか興味がわいてくるところだが、ざっくり言うと「甘味・旨味・塩味・酸味・苦味の基本5味の元になる成分を電気的に測定し、旨味成分が3.5以上(最高5)であり、その他4味のバランスが優れている食品」を大賞として認定するとのことだ。

旨味大賞の基準(AISSY)

エントリーできるカテゴリーは、(1)だし部門(2)肉・魚部門(3)野菜部門(4)発酵食品部門(5)加工食品部門ということなので、料理というよりは「食材」を評価するようだ。

エントリー料は10万円とのことで少々高くつくが、受賞すると科学的根拠に基づいた評価を得ることができるため、製品の信頼性の向上や企業のイメージアップに役立つという。

味覚センサーレオによって「旨味」の基準を満たすことが科学的に証明され、「旨味大賞」を認定されると、受賞特典として「旨味大賞のロゴ」を使うことができる。

受賞者は製品にこのラベルを貼ることができるため、旨味の高さを消費者に伝えることができるというわけだ。詳しくは旨味大賞のウェブサイトを参照のこと。

味覚センサーレオ

旨味大賞で使用される同社のシステム「味覚センサーレオ」とは、いったいどのような装置か。

人間は食品の味を感じるために、舌に存在する「味蕾」と呼ばれる味覚を感知する器官を使う。人間の舌には味蕾がおよそ1万個もあるらしい。

「レオ」では、この味蕾の代わりとなるセンサーで食品から電気信号を測定し、独自のニューラルネットワークで分析、基本となる5味(甘味・旨味・塩味・酸味・苦味)を定量的な数値データとして出力する。

ヒトの味覚を再現した味覚センサー(AISSY)

この装置を使うと、基本5味の強さを数値として出すだけではなく、たとえば「コーヒーに砂糖を加えていくと苦みが減る」といった、味の抑制効果についても計測可能だという。また、みそ汁に塩を加えたときに旨味が増したように感じるなどの味の対比効果もわかる。これらは「味の相互作用」と呼んでいる。

このように、食品を口にしてからの味の移り変わりがわかることから、たとえばコーヒーやビールを飲んだときの「苦み」の立ち上がりと消え方を数値で読み取ることが可能になる。

苦みが一気に立ち上がって急速に消えるのなら「キレ」があると言えるだろうし、逆に苦みがほどよく残れば「コク」があることになる。

レオで得られた5味のデータを同社独自の方程式に入力すれば、このようなコクやまろやかさなどを数値化できて、食品どうしの「相性度」もまた算出することができるのだという。

これまではなんとなく評価していた「おいしさ」を客観的に示すことができるし、食品メーカーに導入すれば効率的で自動化された新商品の開発に貢献できそうだ。

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