人工知能(AI)の技術を活用して、「火山灰」の形状を判別、分類する技術を東京工業大学が開発しました。火山灰の解析を自動化することで、より迅速に噴火の状況を理解することができるようになると期待されます。
「火山灰」の形状は、マグマの粘性や水との接触があったかどうかなど、その火山がどのように噴火したかを知るための手がかりが得られるため、貴重な情報源となっています。
しかし、火山灰のような複雑な形状を観察して判別や分類をするには専門家による高度な知識や経験が必要とされます。また、研究機関から遠く離れた火山で噴火が発生した場合には、採取された火山灰を速やかに解析するには限界もあります。
もし、火山灰の解析を自動化することができれば、形状判断をするための知識や経験に左右されない客観的な判断ができるとともに、迅速な情報の収集にもつながります。
近年は画像認識の分野において人工知能(AI)の技術が非常に進んでいます。そこで、東京工業大学などの研究チームはAIの技術を活用することで、火山灰の画像からさまざまな情報を即座に抽出することが可能ではないかと注目しました。
今回、研究チームは火山灰粒子の画像をAIに学習させて粒子の形状の判別を試みました。
粒子の画像は、ガラス上に散布した火山灰のしたからライトを照射して撮影し、粒子ひとつずつに切り取ったものを使用しました。
火山灰は、伊豆半島や三宅島、アイスランドで採取されたものを使用。これらの粒子画像を使って、「ブロック状」「えぐれている」「長細い」「丸い」という4つの特徴的形状に分類しました。
これらの粒子画像をAIに学習させたところ、判別精度はおよそ92%を達成しました。
しかし火山灰のような複雑な形状は、人間でも正解を決定するのが難しく、複雑であいまいな形状の粒子に関しては「形状の構成比率」で分類しました。
つまり、「ブロック状」や「丸い」など各形状について、それぞれの確率の和として表現しています。確率の値は一つの粒子に含まれている各形状の割合に対応します。
現段階では、まだまだシンプルな画像とニューラルネットワークを用いているため、実用化にはさらに改良が必要。
しかし、将来的には火山灰の詳細な形状を学習させて精度の高いニューラルネットワークを使うことで、噴火の発生時に専門家がその場にいなくても迅速に火山灰の解析ができるようになると期待されています。
そのため、今後はより細かい特徴まで写した画像を用いて、火山灰粒子の色合いや質感なども学習して認識できるAIの開発を目指すとしています。