警察官は職務中にさまざまな事件や事故と関わるため、その行動中に目撃するすべての事象には、非常に重要な証拠や手がかりが含まれています。
米国では近年、警察官が職務中に「ボディカメラ」を着用して映像を保存する試みが広まっています。
収集されたデータを何に活用するかは別にしても、その膨大なデータはたまる一方で、それらのすべてを有効活用することは非常に難しいという。
そこで、警察向けにボディカメラを提供する大手メーカーが、それらのデータを解析するために人工知能を活用しようとする動きを見せています。
スタンガンメーカーで有名なテイザー社には、警察官によって撮影された映像について5.2ペタバイト以上のデータがサーバーに保存されているという。ペタバイトは2の50乗バイトで、1024テラバイトに相当します。
これらのデータはとうてい人間が処理できる量ではないため、何らかの解析方法を見出さなければ、たとえ有用な情報が含まれているとしても手つかずでお蔵入りするしかありません。
テイザー社は、画像認識アルゴリズムを開発しているDextro社を買収すると発表しました。
Dextro社は、すでに警察官による動画データを解析するプロジェクトを進めており、人工知能によって自動車や武器など特定の対象物を認識したり、動画が撮影されている場所に関する情報も解析することが可能だという。
また、動画が撮影されたのは、警察官が「何を」行っているのか(たとえば職務質問だったり、犯人を追跡している最中だっだり)を判断することができるとしています。
テイザー社は、Dextro社を買収することで新たに「Axon AI」というプロジェクトチームを結成するとしています。
さて、警察官が職務中にカメラを着用して撮影された動画データは、いったいどのように活用されるのでしょうか。
一つには、職務中に発生した事件や事故、職務質問、あるいは事件事故に関して一般市民から聴取している内容について、すべての事象を客観的に保存することで、透明性を確保することが考えられます。
また、これらの動画の中には犯人特定につながる重要な証拠や手がかりとなるものが含まれている可能性があるため、事件を解決に導くために活用することもできます。
しかし一方で、ボディカメラによる撮影データの保存に反対する声も挙がっています。
それは、警察が一般市民を監視する目的で利用するのではないか、という疑念があるからです。動画を保存して分析することは、プライバシーの侵害につながるというわけです。
最も懸念を抱いているのは、動画の解析に「顔認識技術」が導入されることで、「移動型の監視カメラ」になることだという。
これに対してテイザー社は、動画解析のシステムに顔認識は使用しておらず、今後も導入する予定はないと回答しています。むしろ顔をぼかして特定できないようにする機能を開発しているとしています。
しかしながら、顔を特定できない様子を撮影したデータは、その活用方法が限定されてしまいます。すでにボディカメラの着用は広まっているとしていますが、警察がこのデータをどのように利用するかは、今後、大きな議論になっていくものと考えられます。