BTOパソコンとは「受注生産方式(BTO:Build To Order)」で製造されるパソコンのことで、顧客の要望に応じて各ユニットの性能などを自由に選択することができます。
NECでは、自社のサーバ製品「Express500シリーズ」について将来の需要を人工知能で予測する技術を開発。その結果、最大で45%もの部品在庫の削減に成功しました。
BTOでは高精度な需要予測が必要
NECの「Express5800シリーズ」は、出荷台数で21年連続ナンバー1を達成するなど国内でも非常に人気のあるPCサーバで、NECのIA(インテルアーキテクチャ)サーバの中でも主力製品となっています。
このシリーズの特徴はなんと言ってもサーバを構成する各モジュールの種類やスペックを顧客が幅広く選択できて、1台ずつ受注生産する方式をとっていること。
そのため、顧客は自分の予算や目的に応じて細かくサーバを構成することができ、その組み合わせはなんと「10万通り以上」だといいます。
さらに、NECのBTOシステムですごいところは、受注から出荷まで「最短4営業日」という非常に短い納期を達成しているところです。
しかし、それほどまで幅広く選択肢を設けて、かつ納期を短くするためには、非常に多彩な部品を工場内にあらかじめ用意しておく必要があります。
部品の在庫を多く抱えることはコストの上昇につながるため、メーカーとしてはなるべく部品在庫を少なくすることが重要です。
しかしながら、在庫の削減を進めすぎると急な需要の上昇に対応できなくなり、納期の延長をまねく結果に陥る危険性をはらんでいます。
そのため、BTO方式で効率よく製造をすすめるためには、精度よく将来の需要予測を行うことが大きな課題となってきます。
AIを使って高精度な需要予測を達成する
先に述べたとおり、BTOにおいて受注から最短4営業日での出荷を達成するためには、生産する際に必要となる部品がすべて揃っていることが必須条件です。
そのため、どのような構成のBTOサーバがどのくらい受注することになるのか、3カ月後の需要予測を行います。
これまでは社内の専門担当者がすべて需要予測を行っていましたが、AI技術である「異種混合学習」を活用して、人工知能によって高精度な需要予測が可能かどうかの実証実験を行いました。
異種混合学習はNECの持つ技術で、最先端AI技術群「NEC the WISE」の中の1つです。
今回、AIによる需要予測を行うために、NEC社内におけるサーバの売上げに関する過去のデータ、そしてマクロ経済指数や社会的なイベントなど、さまざまな情報を学習データとして機械学習を実施して、需要予測を試験しました。
専門担当者による3カ月後の需要予測のうち、一部の製品についてAIで予測を行って、部品すべてについて在庫を評価した結果、AIによる予測によって金額換算で最大45%も削減できることがわかりました。
NECでは、今回の実証結果を踏まえ、AIによる需要予測の本格導入を進めていくとしています。
また、自社のノウハウを活かして、製造業における部品在庫の削減につながる「製品需要予測ソリューション」として今年度中に提供を開始するとしています。