高分子太陽電池の性能をAIで予測する手法を開発

次世代の太陽電池として期待されている「高分子太陽電池」の材料設計において、人工知能(AI)を活用して電池の性能を予測する手法を大阪大の研究グループが開発しました。材料の候補となる高分子構造を実験前に予測することが可能になります。




太陽光発電の一種として高分子を使った太陽電池の研究が進められています。すでに実用化されているシリコン太陽電池や化合物電池と比べると軽量で、色や形状の自由度も高いことから建物の屋上や窓、壁のほか、さまざまな場所への設置が可能になります。

高分子太陽電池の多くでは、高分子とフラーレン誘導体の混合膜が使用されています。

高分子フラーレン太陽電池素子の発電イメージ(大阪大)

混合膜に使う高分子材料の化学構造は、電子を供与する部分と電子を吸引する部分、そしてアルキル鎖からなります。これらの候補になる化学構造の組合せは膨大になり、混合膜の構造やそれを用いた太陽電池がもつ実際の性能(光電変換効率)についてはこれまで予測できませんでした。そのため、あらゆる材料とそれらの組合せを検討するには非常に多くの実験をする必要があります。

そこで、研究グループは高分子材料の構造から電池としての性能を予測するためにAIの手法を導入しました。

研究では、これまでに高分子フラーレン太陽電池の混合膜の材料として報告されている高分子の化学構造、そして性能に関わる物性値を1,200個収集して、これらのデータに基づいて分類器を構築しました。

分類器とは、ある入力パラメータに対してそれがどのグループに属するかを判定するモジュールのことです。

今回、各化学構造を1,024個の指紋キー(数字の列)に変換して、さらに分子量その他の物性値を入力パラメータとしました。そして、電池としての性能である「光電変換効率」のグループ(たとえば、4~5%のグループなど)を出力するように機械学習を実行しました。

今回用いた機械学習のアルゴリズムは、「ランダムフォレスト(RF)」と呼ばれるアルゴリズム。光電変換効率とは、太陽電池で光エネルギーを電力に変換する効率のことです。

マテリアルズ・インフォマティクスによる高分子太陽電池の材料探索(大阪大)

グループ数を調整して検討したところ、この分類器を使って正答率を向上することに成功、すでに学習した構造については95%以上の正答率が得られました。また、これまでの計算化学では不可能だったアルキル鎖の選別についても可能になりました。

さらに、データベースで提供される分子構造をこの分類器で選別して性能を予測し、実際に合成して性能予測を行ったところ、近い性能が得られることがわかりました。

この分類器を使って材料候補となる化学構造を予測して、これによって選別された高分子を合成して実験スクリーニング法を組み合わせることで、迅速な材料開発法として確立することが可能になります。

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