人工知能で薬の副作用を予測、けいれん誘発作用を100%の正確率で

人工知能を使って薬の副作用を予測する方法を、東京大の研究グループが開発しました。




医薬品を開発するときには、実際に人に薬を投与する臨床試験を行う前に副作用が起きるかどうかの安全性の確認をします。ところが、開発中の薬が中枢神経系に対してどのような影響を及ぼすかについては、予測が困難です。

そこで、研究グループはマウスの脳の標本に薬を作用させたときの反応から副作用の発生を予測する手法を人工知能を使って開発しました。

人に投与したときに、けいれんを誘発する副作用がある薬の場合、「けいれん様発火」と呼ばれる特徴的な局所場電位の変化が起きることが知られています。局所場電位の変化とは、文字通りに脳の局所的な電位変化のことです。

研究グループは、マウスの脳からスライス標本を作製して薬物を適用したときの局所場電位の変化を記録しました。

けいれんを誘発する副作用が報告されているさまざまな薬物で実験したところ、マウスのスライス標本でも、けいれん様の異常な反応が起こることが確認されました。

しかし、さまざまな薬物で試したところ、けいれん誘発の副作用がない薬物でも反応してしまうことがあることもわかりました(偽陽性)。

けいれん様の反射と偽陽性の反射の違いは、人が実際に見れば簡単に区別ができますが、計測した結果から自動的に判別するためには複雑なアルゴリズムを開発する必要があります。

そこで、研究グループは人工知能を用いて自動的に画像判定できるシステムを開発しました。

薬物を適用したときの局所場電位の変化を検出して1つの画像ファイルに変換し、これを機械学習の一種である公開ライブラリー「Caffee」に入力、電位変化の特徴データに変換しました。

実際にCaffeeを使って副作用のある薬物を判別できるかどうかについて、14種類の既知の薬物を使って確認したところ、すべての薬物で正確に副作用を予測できることが確認されています。

さらに、新しい2種類の薬物についても検討しましたが、これらについても臨床報告の副作用の有無と一致しています。つまり、16種類の薬物について100%の精度で副作用を正確に予測できることがわかりました。

人工知能を使った技術は医療や医薬研究の分野においても拡大しつつありますが、今回もその一つの例と言えます。研究結果は「Journal of Pharmacological Sciences」に掲載されました。

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