囲碁や将棋の世界では、すでに人工知能がプロに勝利する対戦が相次いでいますが、今度はポーカーのプロに「圧勝」したという。(AI、ポーカーでプロ4人に圧勝 2億円超のチップ獲得)
昨年、将棋の対戦でプロの棋士がAIを使っていたのではないかとの疑惑をかけられる騒動がありました。最終的には不正を決定づける証拠がないとして疑惑が晴れ、将棋連盟の会長が責任をとって辞任をするという事態にも発展しました。
この問題のポイントは、不正を行っていたかどうかではなく、「AIを使うと対戦が有利になる」ということをプロの棋士たちがすでに認めているという点ではないでしょうか。
それほど、将棋の世界では「人工知能」はすでにプロの棋士をも凌駕するほどの実力をもつまでに進化しているとういわけです。
さて、今回は「ポーカーのプロ」との対戦です。
将棋や囲碁の世界ではすでにAIはプロと肩を並べるまでに進化していますが、実はポーカーの対戦は、人工知能にとってはなかなか手強いものだとされています。
その理由は、「相手の持ち札がわからない」からです。
将棋や囲碁、オセロ、あるいはチェスの場合は、対戦する相手との間にある盤上のコマを等しく見ることができます。つまり、次の一手を打つために必要な情報をすべて正確に知ることができます。
ところが、ポーカーの場合は相手がどのような札をもっているかがわからないため、論理的に先を読むことが難しいため、より複雑な判断が必要になってくるわけです。
今回の対戦は、米ペンシルベニア州ピッツバーグにあるカジノで、今月の半ばから20日間をかけて行われました。
対戦したAIはカーネギーメロン大学が開発した「リブラトゥス」。
対戦に使われたのは「テキサスホールデム」と呼ばれるポーカーで、プロ4人とAIが、それぞれ1対1でチップを賭けて対戦しました。行われたゲームは20日間で12万回にものぼったという。
テキサスホールデム・ポーカーの特徴は、テーブル上に「コミュニティカード」と呼ばれる共通カードが5枚ある点です。このカードは、すべてのプレイヤーが自由に使うことができます。
プレイヤーは、配布された2枚の手札(ホールカード)とコミュニティカードの中から5枚のカードを選択して強い組み合わせを作ることができます。
一般的なポーカーでは、配布された5枚のカードについて、他の対戦者は一切見ることができません。しかしテキサスホールデムの場合は、見ることができないカードは配布された2枚だけで、テーブル上にあるコミュニティカードについては情報が与えられるのでAIにとっては比較的対処しやすいゲームなのかも知れません。
20日間の対戦の結果、AIは4人のプロにすべて勝ち越し、総額で176万ドル以上のチップを獲得したという。(仮想通貨であって、実際に現金には交換されませんでしたが)
少ない勝負であれば、配られたカードによって勝負運が左右されますが、今回は12万回にも及ぶ長期戦でしたので、AIがプロに圧勝したことは統計的にも認められました。
AIの開発は、ポーカーゲームに勝つことが目的ではありません。相手の手札がわからない状況で先を読むというアルゴリズムは、ビジネスにおける価格交渉や軍事戦略など、複雑な戦略を立てることが必要なさまざまな状況で有利に働く意思決定に応用できる可能性があります。