ザッカーバーグ氏の団体がAIのベンチャー企業「Meta」を買収、医学研究に貢献目指す

フェイスブックの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏とプリシラ・チャン夫人が設立した団体が、人工知能を開発するカナダのベンチャーを買収しました。(ザッカーバーグ夫妻の慈善団体、AI企業買収 疾病根絶支援の一環で




買収の目的は、「疾病を根絶する使命の一環」とのことです。買収額については明らかにされていませんが、夫妻は昨年9月に、今後10年間にわたって30億ドルを疾病の根絶と治療を支援するために投資すると発表していました。

買収したのはカナダのトロントに本社があるベンチャー会社の「Meta」。この会社は、AIを使って研究論文の解析を行っているそうで、今後は研究者が無料で使うことのできるツールの開発に取り組むとのこと。

医薬や医療技術の発展は非常に速く、医学や生命科学に携わる研究者は1日に数千本も発表されている研究論文をチェックしていく必要があります。

研究者は、膨大な量の研究論文の中から自分の研究対象に関連する論文を抽出して、自分の研究の参考になるのか、自分の研究の先を行っているのか、あるいは自分の研究を否定するものかなど、その論文がどのように影響するかを日々、判断しなければなりません。

しかし、実験やその他の仕事をしながらこのような情報収集を完璧にこなすことは、現実にはほとんど不可能と言えます。とくに医学は研究論文が非常に多い学術分野のひとつです。

そこで、Meta社は人工知能の技術を使って日々更新される研究論文を高速解析して、研究者らが必要とする情報を提供しています。

人間の頭脳だけでは不可能な規模のスピードで、大量の論文についての関連性やパターンを解析することがAIでは可能になります。

Meta社の人工知能技術は、論文の投稿・査読システムにもすでに応用されています。研究論文の初稿が提出された際に、その論文が高い影響力をもつ内容であるかをAIが自動的に判断して、ランク付けを行うことができるシステムで、Aries Systems社が採用しています。(オンライン投稿・査読システムEditorial Manager、Meta社の人工知能技術を統合

なお、ザッカーバーグ夫妻が設立した団体は「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(Chan Zuckerberg Initiative)」という慈善団体で、ザッカーバーグ氏はフェイスブックにおいて「数年にわたってトップレベルの科学者や健康問題のエキスパートの話を聴き、資料を研究した結果、われわれは自分たちの子どもたちが生きている間に、すべての疾病を予防、治療、管理できるようになると楽観視するにいたった」と述べています(マーク・ザッカーバーグ夫妻の財団、「今世紀中にすべての病気の治療を可能にする」ために30億ドル投資へ)。

現代の主な死因である心臓病やがん、感染症、神経性疾患の対策に取り組むため、スタンフォード大やカリフォルニア大バークリー校、カリフォルニア大サンフランシスコ校と協力する「Biohub」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げるとしています。

カナダのMeta社の買収は同プロジェクトの一環とも言えるでしょう。

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