クレジット決済のネットワークシステムを人工知能で監視することで、システム障害のリスクを早期に検知する取り組みを日本カードネットワークが始めました。
これまでの運用管理者による検知では困難だったシステム障害のリスクをあらかじめ把握し、障害の発生を未然に防ぐことができます。
カード決済のネットワークを監視する重要性
JCBグループの日本カードネットワークが運営するクレジット決済ネットワークシステム「CARDNET」では、全国におよそ68万台ものクレジット決済用端末が接続されています。年間の処理件数は約126億件にものぼり、この十年間で約4倍にもなっています。
クレジット決済のシステムを安定的に稼働するためには、ネットワークシステム上に発生する障害リスクをなるべく早く検知して、システム障害を未然に防いだり、あるいは障害が発生した場合に早期の復旧することが重要になってきます。
今回、日本カードネットワークでは日立製作所の「システム稼働リスク可視化ソリューション」を採用してAIによるネットワーク監視を行う試みを開始しました。
AIを活用してシステムの異常を自動で監視する
今回採用されるシステムでは、ネットワーク上に発生するデータの流れを人工知能が学習することで、通常とは違ったデータの流れを監視します。
この監視システムによると、システム運用管理者では発見できなかったシステムの速度低下だったり、あるいは通常ではエラーとして検知されないネットワーク上の「サイレント障害」など、潜在的なリスクを早期に検知することが可能になります。
また、このシステムでは異常検知の網をくぐり抜けて障害が発生してしまったケースであっても、ネットワークデータや周辺機器の情報をAIが自動的に分析して、リスク要因を推定して可視化できるとしています。
そのため、障害が発生した箇所だったり要因を絞り込むことができ、さらに障害が発生した箇所によって直接的に影響を受ける接続先も把握し、システムの復旧に要する時間を最小限に食い止めることが可能になります。
加盟店とクレジットカード会社や金融機関をつなぐネットワークシステムを監視し、データの流れを分析。サイレント障害やシステムの速度低下など潜在的な障害リスクを検知します。
障害が発生した場合は発生箇所や要因を自動で推定し、将来的には事前に登録された復旧手順を自動で実行できるシステムとなります。
今回の取り組みでは、CARDNETのシステムインテグレーションを担当するTIS株式会社が協力しています。
システム稼働リスク可視化ソリューション
日立の「システム稼働リスク可視化ソリューション」では、障害発生にいたる前の潜在リスクを未然に検知することができます。
通信パケットの流れを監視して、統計情報だけでは発見が難しかった小さな変化も検知できる特長があります。
潜在リスクが検知された場合には、疑わしいと思われる機器やサービスの情報を収集して分析し、根本原因の絞り込みを実行。不調の要因をすばやく推定して可視化します。
システムの正常や不調はグラフィカルに表示されて、直感的にシステム全体の状況を把握することができます。
ネットワークや機器に変化があるとすぐに通知され、システム運用者の負荷を軽減。不調時だけではなく、通常の状態やシステム構築時においても、全体を一元的に監視したり、潜在リスクの直感的な把握ができます。