人工知能を使って物質の界面構造を決定、計算コストが3600分の1に

Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedInPrint this pageEmail this to someone

さまざまな分野で工業的に使用されている物質では、物質と物質が接している「界面」が重要な役割を担っています。この界面の構造を計算する手法に人工知能の技術を活用することで、計算コストをおよそ3600分の1まで減らすことに成功しています。

界面構造の計算

界面とは結晶構造の欠陥の一種ですが、物質と物質が接している領域で非常に複雑な構造をとっています。原子同士が特徴的な結合で結ばれているために、その構造によって物質にさまざまな機能を生じさせます。そのため、物質の研究では界面構造を決定することが非常に重要です。

しかし同じ物質内でも多種多様な種類の界面が存在しており、それぞれが違った構造をもっています。

さらに、その中のたった1種類の界面にしても、数千から数万という膨大な数の候補構造が存在するため、物質の界面構造の決定は非常に困難な作業となっています。

従来は、候補となる界面構造について理論計算を行い、それぞれの構造のエネルギーを算出、そしてその中で最も安定なものを決定する必要がありました。しかしながら莫大な数となる界面構造を網羅的に決定することは非常に困難なものとされてきました。

しかし近年では、情報科学の手法を物質科学の分野でも利用する「マテリアルズインフォマティクス」と呼ばれる分野が進展してきており、人工知能の技術を活用する手法が開発されました。

転移学習と「クリギング」で計算コストを大幅に削減

物質内部に存在する「界面」の構造を迅速に計算するため、東京大学・生産技術研究所などの研究グループは、転移学習という技術を使ってAIによる構造を行いました。

資源の探索に用いる方法で「クリギング」と呼ばれる手法があります。

この方法は、ある地点で採掘を行った結果得られた資源量から、まだ掘削を行っていない場所に埋まっている資源の量を推定する手法です。最も埋蔵量が多い場所を効率的に推定するために利用されるものです。

研究グループは、界面構造を探索する目的で、このクリギングの手法を応用しています。そしてさらに、このクリギングに対して機械学習の一種である「転移学習」の技術を活用しました。

転移学習を利用するため、各界面がもつ3次元の探索空間を74次元に拡張してパラメーターを増やしました。

今回、界面構造の決定にクリギングを使うにあたって人工知能のモデルを構築します。

転移学習とは、ある問題を解くために作成した人工知能を、類似した別の問題を解くために利用することをいいます。すでに学習した知識を利用して新しい問題を解くことで、高速かつ正確に解くことが可能になります。

この手法の有効性を確認するため、研究グループはすでに報告されている、鉄に関する33種類の界面構造を決定しました。

この33種類の界面の構造を従来のやり方で解くためには、1650660回もの膨大な計算量が必要となります。これは1台のコンピューターで計算すると30年以上の時間を要する計算で、並列計算機で実施したとしても数週間かかる計算量です。

しかし、クリギングを用いた計算手法で計算すると、1241回の理論計算で済みます。さらに、転移学習を活用してクリギングを行うと、わずか462回の計算で行うことができます。

転移学習なしの場合と比較すると、およそ3倍速いスピードで構造の探索を終えることができます。1台のコンピューターがあれば数日で計算することが可能です。

結果的に、従来のやり方と比べてみると、クリギングと転移学習の手法を活用することで、計算コストは3600分の1にまで減らすことができるというわけです。

現在、工業的に使われている多くの物質において、その機能に界面が重要な役割を果たしています。

必要な機能や性質をもった物質を開発するスピードを上げるためには、界面の構造決定は不可欠なものです。AIを活用したクリギングの手法は、効率的に物質開発を進めるためには重要なものになっていくと期待されます。

IMAGE/SOURCE1
Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedInPrint this pageEmail this to someone
NEW POST