近年ではインターネットバンキングの利用率が伸びていますが、それに伴って不正送金の被害が急増しています。
ネットバンキングによる不正送金の被害数は2012年頃から伸び始め、警察庁が発表したデータによると、昨年1年間の被害件数は1291件。被害額は約17億円にもなります。
各銀行の対策が徹底されてきた効果のためか、2014年を境に被害件数は減り始めています。しかしながら、新たなウイルスが次々と作られるなど手口も高度化していることもあり、銀行側は不正送金の対策業務を強化そして軽減するための新たなシステムづくりを実施する必要があるでしょう。
AIによる不正送金のモニタリングシステム
今回、住信SBIネット銀行はNECと共同で人工知能を活用した「不正送金検知システム」の開発に着手しました。
同銀行では、第三者による不正送金を防ぐために24時間365日体制でモニタリングをしています。
モニタリング業務では、通常とは異なる特徴をもった送金を検出して、「不正送金の疑いあり」とします。このモニタリング作業にAIを活用することができれば自動化することが可能であり、また精度の向上も見込まれます。
同銀行によると、このAIを活用した不正送金検知システムを導入することで、行員の作業量を9割以上削減できるとしています。
同銀行とNECは、今年2月から5月までにすでに実証実験を実施しており、これまでに発生した既知の不正取引のすべてを検知できたとしています。そこで今回、実務に適用するためのシステムづくりに着手しました。
不正送金に関してAI技術を活用したモニタリングシステムを導入するのは、銀行業界では初だとしています。
今回のAIによるモニタリングシステムには、NECのAI技術群「NEC the WISE」が活用されます。
NEC the WISEでは、「異種混合学習技術」と呼ばれるAI技術が含まれています。この技術を使うと、人間では発見が難しい多数の「規則性」を自動で見つけ出すことができます。
ビッグデータに隠れた規則性が明らかになれば、もしその規則性に従わない特定のデータが検出された場合にそれを他のデータとは特徴が異なる「異常データ」として認識することが可能になります。
そのため、通常の取引で見られる膨大な量の送金に関するデータから「規則性」を見つけることで、その規則性に従わない異常な送金を発見することが可能になります。
住信SBIネット銀行は、AIを活用した新たな不正送金検知システムを2018年4月にも導入する予定です。NECは今後、ほかのネット専業銀行や地方銀行にも同様の不正送金検知システムの提供先を拡大していくとしています。