人工知能(AI)の分野で富士通とマイクロソフトが協業すると発表。「働き方改革」の領域で協業を推進するとしていますが、その中身はマイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft 365」をベースとした新しいソリューションを共同開発する内容のようです。
富士通とマイクロソフトは2002年に企業向けのソリューション分野で協業を開始してから、クラウド分野やIoT分野などでも領域を拡大しています。今回、近年のデジタル技術を活用した生産性の向上が進む中で、協業の枠組みを人工知能の分野にも広げていくようです。
マイクロソフトは今年、Office 365やWindows10、EMS(Enterprise Mobility + Security)を統合したパッケージを発表しました。Office365との違いが分かりにくいですが、Officeのアプリ群を使えるほかにWin10向けのセキュリティや管理機能を含み、一元管理できるようなパッケージといったイメージでしょうか。
富士通はAIに関連した技術やノウハウが蓄積しており、「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」と呼ばれるAI技術を体系化したサービスを提供しています。
一方で、マイクロソフトは「Microsoft Azure」というクラウドサービスを展開しており、その中ではAIプラットフォームもまた提供しています。
今回両者が共同開発を目指しているのは、Microsoft 365から取得される文書やメールなどのビッグデータの活用です。これらのデータを「Microsoft Graph」で集計して「働き方改革」を実現することです。
Microsoft Graphは、Microsoft 365を利用した際に自動的に蓄積されるメールやカレンダー、連絡先、さまざまな文書などのデータにアクセスすることができる、いわゆるAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)です。
Office 365には「MyAnalytics」や「Workplace Analytics」という機能が搭載されています。Microsoft Graphによって集計されたデータをこれらの機能で分析し、そして富士通の「Zinrai」を活用することで、メール内容に含まれる業務の重要性や緊急性を把握できます。そして重要なタスクについては利用者に対応を促すといった使い方が可能になります。
このように、マイクロソフトのアプリケーションと富士通のAI技術を組み合わせることで、ユーザーは優先度の高いタスクから迅速に対応できて、限られた時間を有効活用することができるということです。
このほか、マイクロソフトのAIプラットフォームと富士通の対話型AI、自然文解析技術を組み合わせることで、業務の自動化や省力化を実現します。たとえば、会議調整にAIを使うと参加者の都合を考慮した日時や形式、場所などがリストアップできるとしています。
また、人やモノのつながりをグラフ化した「ナレッジグラフ」にZinraiの解析を組み合わせることで、プロジェクトの立ち上げ時に最適なメンバーを選定できたりなど高度な情報検索に役立てるとのこと。
これらのAI技術を活用したさまざまなサービスは、あらゆる面において効率的な業務の遂行を可能にし、「働き方改革」を実現するソリューションの開発につながるといえそうです。